額装におけるセレンディピティについて

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最近ネットを見ているとこのセレンディピティということばがよく出てきたりします。wikipediaで調べるとSerendipity-セレンディピティとは「何かを探しているときに探しているものとは別の価値のあるものを見つける能力。平たく言えば、ふとした偶然をきっかけにひらめきを得、幸運をつかみ取る能力のことである。」ということ。

こう書かれると、なんだかすごい能力だなあと思ってしまいますが、よくよく考えてみると額装をしているとそういう能力はわりと必要とされるというか、ないと困る力のひとつのような気がしてきました。

額装におけるセレンディピティ


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額装を作っていると、どうしても当初目的としていたかたちにうまく辿りつかないことがあります。
こういう作品に仕上げたいんだけど、と頭で思い描いているかたちに現実がうまく呼応してくれないんですね。うまくいくときといかないときがあって、うまくいかないときは何をやってもダメだったりします。とくに青写真というか、こういう風に作りたいという想いがまず先立ってあるときほど、最初からディテールに至るアイデアが浮かんでいる場合によく起こるような気がします。

これは僕の個人的な考えですが、額装はコンピュータの画面上でデジタル的に描かれるものではなくて、手作業のきわめてアナログ的な行為だからこそ、そうした不一致みたいなものがおきやすいのだと思います。

具体的な例をあげます。たとえば紙。紙の色は無数にありますが、これという作品にあった紙が見つかることはけっこう稀なことだったりします。パッスパルトゥに使う紙。ビゾーに使う紙。アクセントとしてフィレに使う紙などなど、そうした紙を選んでなおかつそれぞれの紙の色を調和させるだけでもけっこう大変なことだったりします。同じ赤色でも赤色には無数のヴァリエーションがあり、ひとつとして同じ赤色は存在しないからです。それに加えて、フレームだって無数の選択肢があるとはいえ、現実に使えるものはかぎられてきます。うまくぴたっと合えばいいですが(ときどき運よく目当てのものが見つかることがあったりします)質感やら色彩やらまでこだわりだすとなかなかこれと決めることができなかったりするわけです。とくに作る前のイメージが強く頭のなかに存在していると(ファーストインプレッションみたいなもの)、そこからなかなか離れられなくて袋小路みたいな場所に入り込んでしまったりします。そういう場合はいっそのこと、まったく関係ない紙を使ってみた方がけっこううまくいったりしたりします。

そういううまくいかないときにこのセレンディピティという考え方は利用できるんじゃないかなと思います。何かを探しているときに探しているものとは別の価値のあるものを見つける力。本来の意味では、もっと大きなこと、たとえば人生の目的とか、生きる意味とかを模索している途中で偶然出会った物事に目を向けて、そちらに価値を見いだして人生を豊かにしていくということだと思いますが、額装作品制作中の小さな悩みにだって使って悪いということはないはずです。

この考え方の基本は、まわりのことに目を向けるということだと思います。大雨が降って予定していた食材の買い出しに行けなくて、仕方がないから冷蔵庫のなかのものであり合わせのご飯を作る、みたいな自分の半径数メートルのなかのものでなんとか問題を解決していくということがわりと重要なことなんだと思います。

なんだか話がややこしい方向にいってしまいましたが、額装でうまくいかないときは身の回りのものに目を向けてなにかできないか考えてみると新しい発見につながるんじゃないかなと思いますよ。


2015年04月09日 | Posted in コラム | タグ: No Comments » 

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