マシュー・ハーバートのベルリンでの講演

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昨年ドイツのベルリンで開かれていたAbleton(音楽制作ソフトウェアの会社)のカンファレンスでの
matthew herbertの動画を見つけたので、さらっと見てみました。(長さは1時間くらい)
ちなみにabletonがドイツの会社なのでドイツ語のサイトですが、
動画には日本語字幕(たぶんコンピュータが日本語設定だと日本語字幕がでる?)が出るので、
英語で話している内容を日本語で理解できます。こういう翻訳機能はいいですね。

ちなみに内容はマシュー・ハーバートが音楽を作る際に表明している個人的なマニフェストについて。

動画のなかでも解説されていますが先に書いておくと、ハーバートは2005年に音楽を作る上での
マニフェストをホームページ上にアップしています。個人的な信条みたいなものですね。
それはたとえば他人の作ったサンプルを使わないとか、
シンセサイザーやドラムマシーンを使わないとか、
プリセット(最初から用意されているキットみたいなもの)を使わないとか、
設定はその都度ボタンやつまみの位置を戻すとか、
使った機材や手法は公開するとか、
etc…etc…

かんたんに書くと音楽の世界にコンピュータが登場したことによってかんたんになってしまった部分をあえて使いませんよ、というようなことをマニフェストによって宣言しています。
現代的な感覚でいうとめんどくさいなと思ってしまうことばかりです。でもあえて制約を設けることで不自由な状態に置いて、不自由さのなかでおもしろいことをやっていこうというのはアイデアを出すときにもとてもよい方法でもあります。コンピュータでいつも同じ設定を呼び出して作業すると毎回同じものができてしまいますし、どこにでもあるものを使えば世界中の人々が同じものを作るだけになってしまいますからね。

動画をさっと見たなかでいろいろ興味深いところもあったのですが、大きく2点ほどとくにおもしろいなと思ったエピソードがありました。
ひとつはドビュッシーは作曲するときに庭にいる鳥たちを追い払ってから作曲に向かったという話を聞いた後、ハーバートは自分なら逆に窓に餌を置いて小鳥を集めるみたいなことを言っていたこと。まわりの環境を排除するのではなくて、そういった生活音とかを積極的に取り入れて、アクシデントを利用しようとするためらしいです。動画のなかでも述べられていますがドビュッシーのやり方が悪いとかそういうことではなく、ドビュッシーの方法は制作の際の煩わしい情報を遮断することが重要(作業をするときは携帯とかネットを触らない的な意味)で、ハーバートの制作では逆にそうした自分のコントロールできないものを積極的に取り入れることで自分の頭で考えていること以上のことを引き出そうとする(携帯が鳴ったらその音とかそのとき電話の向こうにいる相手の声を利用するとか)、みたいなちがいがあるということです。どちらの考え方も額装をするときの環境に置き換えてみると、参考になるなあと思いました。情報を遮断して集中力を高めてもいいし、それともあえて環境を乱雑にしておくことで偶然できあがるものに期待してみるのもいいかもしれません。

もうひとつは前にもこのブログで紹介したアルバム「the shakes」制作時のエピソード。herbertは上記のマニフェストを掲げることが多いので、普段は既存のシンセとかドラムマシーンを使わない制作方針を貫いているのですが、このアルバムは初心に帰ってダンスミュージックを作ろうということで、その際マニフェストの制限をとっぱらって自由に作ったそうなんですね。で、普段使わないようにしているシンセとかドラムマシーンを存分に使ったら(最後にはうしろめたさを感じるくらい)いい音がかんたんにできて、とてもたのしかった、、、そうです。そういうことを無邪気に語っているのもいいですね。そうありたいものです。

音楽業界の裏話的なものもでてきたりするので、時間ができたらもう一度じっくり見てみる予定です。

 


2016年06月29日 | Posted in Music, コラム | | No Comments » 

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