ハーバートに学ぶ額装のアイデアの出し方

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イギリスのミュージシャンであるmatthew herbertの音楽性みたいなものを紐解いて額装のアイデアの出し方について考えてみたいと思います。
たぶん今回の投稿はあまり直接的には額装と関係ないかもしれません。

なぜいまハーバートを取り上げるかというと、6月に待望のアルバムを出すことがアナウンスされたから。
あまりに発売が待ち遠しくてこのところ毎日のように過去音源を聴き漁っていて、とても刺激を受けているからでもあります。

ハーバートに学ぶアイデアの出し方


▲ルールを決める

額装をしているとついつい額装のなかだけで次のアイデアになるものはないかなと探してしまうことがあります。
それもいいのですが、あるひとつの分野だけで物事を見ていると狭量というか視野が狭くなってアイデアを出すこと自体がむずかしくなってしまうことがあります。考えのようなものが袋小路に入ってしまって、にっちもさっちもいかなくなってしまうのですね。

そういうちょっとうまくいかないなというときは額装から距離を置いて、いつもとちがう視座からものを見てみると意外と問題の本質が見えてきて、わりとあっさりと問題が解決したりすることがあります。アイデア的にいえば頭の上で電球がぱっと点灯するみたいにアイデアが浮かんだりする。

じゃあどうやって視座を変えればいいのか、ということが問題になります。視点を変えたくても長年ともにしてきた視点を変えるというのはかんたんなように見えてけっこう難しいことです。スイッチをオン/オフするみたいに切り替えることは普通はできません。

で個人的にはそういうとき、自分にルールみたいなものを課して額装をしたりすることにしています。たとえばどこかに出かけてそこで見つけたものだけで作品を作ってみる、とか。あるいはお菓子の箱を使って額装を作ろうと決めたら、包装に使われていたものを含めてすべて作品のなかで使い切ってみるとか。普段使ったことのないドキュモンを使ってみるとか。

そんな風にルールを決めてしまうと物理的にできないことや不自由が生まれてきて、反対に何か考えないとうまくいかないことが多くなって、結果としてアイデアが出てくることが起こったりします。ちょっとスパルタ的な方法論ですが。

僕のこうした考え方の基本は、前述したmatthew herbertの考え方に起因する部分が大きいです。

説明すると長くなってしまうので端折りますが、ハーバートの個性的なところは自分にルールを決めて曲を作ることにあります。ルールのなかには他の人の曲を使わないとかプリセットを使わないというものがあり、現代的な感覚からすると面倒くさいことをいっているなと思う部分がたくさんあるのですが、そうして制約を課すことでずっとオリジナルなものができて、だれも作ったことのない曲ができてくるという側面があります。

個人的におもしろいなと思ったエピソードは、昔どこかで読んだのですが、ハーバートが他の人から楽曲のリミックスの依頼を受けたとき、もらった素材だけでリミックスするということで、文字通り受け取ったCD(などのメディア)とか封筒とかそういう受け渡されたものそのものを使って曲をリミックスしたそうです。紙をやぶったりCD叩いたりして音を加えたんでしょう。そういう感覚は僕に強い影響を与えていて、ここで紹介した作品のように、包装の紙袋とかを利用する感覚につながっているんじゃないかなと思ったりしています。

少しまじめに考察してみると、制限をつけるというのはとても大事なことで、たぶんそれはゲーム感覚みたいなものが出てくるからだと思います。ゲームをするみたいにアイデアを出す、というか。これも昔どこかで読んだのですが、作家の村上春樹さんがどこかで書いていたことで、村上春樹さんはジャズのレコードを集めているのですが、どんなにレアで欲しいものを見つけても5000円(だったかな?)という自分で決めた上限を超えるものは買わないようにしているそうです。たぶんお金の問題じゃなくて、そのルールを破ってしまうとゲーム感覚みたいなものが薄れてしまうからだと思います。テレビゲームでもチートと呼ばれる裏技を使うといっきにおもしろくなくなってしまう、という感じに似ています。

ちょっと話がそれましたが自分なりにルールを決めて作品を作ってみるとときに思いがけない発見があったり、灯台下暗し的なことに気づいたりすることがあったりしますということです。

▲異なる要素をバランスよく混ぜ合わせる

もうひとつ。ハーバートから僕が学んだことは、昔読んだ音楽雑誌のなかに出てきたインタビューに書いてあった秩序のなかにカオスを混ぜるという話。

matthew herbertはジャズのビックバンドを率いて音楽を作ることもあるのですが、ジャズのビックバンドで演奏する人たちは基本的には譜面通りにしか演奏できないそうです。アドリブとかそういうものはなくて、きちっとしている。反対にハーバートという人はエレクトリックな方面の人で、どちらかというとその場で生まれてくる音と無邪気に戯れる印象が強い人でもあります。「水と油」みたいな取り合わせみたいに見えますが、これがうまく機能して美しい音楽が生まれるわけです。ハーバートはインタビューのなかでジャズの人たちは譜面通り秩序だって演奏するから、自分の役割はそうした秩序だった世界に小さなカオスを生み出すことだといっていました(細かいところはちがっているかもしれません。何しろずいぶん前に読んだものなので)。一見、このふたつは矛盾しているように思えますが、バランスが重要というか、たとえば額装でいうとしたら、きちっとした作品のなかにどこか一点遊び心みたいなものを加えてみるとか、あるいは簡単そうに見える作品でも実は細かいテクニックで作り込まれてあったりするとか、どちらか一方の要素だけではなく相反する要素が加わっていることで、作品により深みというか深度のようなものが付与されるのではないかなと個人的に思います。

この一見両極端に見えるものをバランスよく作品のなかに落とし込んでいくという考え方は、アイデアを出していくときにもけっこう役に立ちます。作品づくりの途中で何か足りないなと感じたりすることがときどきあるのですが、そういうときはちょっと別の角度から見て、一見合いそうにないものを加えてみると、意外とおもしろい結果になったりということがあります。異なる輪郭をもったものを加えることで最初にあったものの本来の輪郭が強調されるというか。

ハーバートという人の音楽性もそういう部分が多くて変な音を使ってものすごくポップなものを作るとか、音楽的に複雑な構造をしているのにメロディはキャッチャーなところがあるとか、今回も聴きなおしていてまだまだ学ぶことがあるなあと思いました。


2015年04月22日 | Posted in Music | タグ: No Comments » 

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