le matin 朝

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今回の雑誌のテーマは朝、それも空が明るくなりはじめる比較的はやい時間帯の朝をイメージしているといわれたとき、なぜだか頭に浮かんできたのはトルーマン・カポーティの『ティファニーで朝食を』のことでした。
オードリー・ヘップバーンが主演しているあの有名な映画ではなくて、その原作となった小説に出てくるヒロイン、ホリー・ゴライトリーが口にした最高に居心地のよい場所のイメージ。ティファニーの店内のようにけしてひどいことの起こらない場所。自分もそんな場所で静かな朝の時間をぼんやりと過ごすことができたらどれほど幸せだろうかという考えがふと頭によぎったのです。インターネットやメールに煩わされる日常の世界から少しだけ距離を置いて、時間に追われて慌ただしく朝食を胃のなかに流し込むのではなくて、ゆったりとした朝の時間を、せめて休日だけでもたのしむことはできないだろうか、と。
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もしかすると、そんなゆったりとした時間とこの雑誌で扱う額装とのあいだには一見つながりがないように感じられるかもしれません。額装はといえば、紙をカッターで切ったり、釘を額に打ち付けたりといった派手な作業のイメージがありますからね。もしあなたのとなりに額装家がいて、朝から作業にとりかからずソファに寝転がってぼんやりとしていたら「おいおい、そんな風に朝の陽光を眺めていたって作品はできあがらないよ」とつい口に出してしまいたくなるかもしれません。
でも、そうしたのんびりとした時間も、クラフトとして額装に携わる者にとってはとても重要なものだと思うのです。額装は何も手を動かして作るだけのことを意味するわけではありません。ゆったりとしているように見える時間のなかであれこれ頭を働かせることも同じくらい大切なことです。写真家がカメラを手にしていないときも無意識に次の作品の構図を探し求めるように、新しい作品について考えたり、額装するにふさわしいドキュモン(素材)を探し求めることだって、立派な額装的行為といえるでしょう。それには朝のリラックスした時間がとても役立ちます。
それに朝はアイデアの宝庫でもあります。ジャムやオレンジジュースの瓶についたラベルやハーブティーのパッケージ、テーブルに並ぶクロワッサンやコーヒーだって何かしら新しい作品のイメージの起点となる可能性を秘めています。昨日の夜に見た夢が何かのインスピレーションにつながる、そんなことだってあるかもしれません。そう考えてみるといつものおだやかな朝の時間にだって額装とつながりあうものがあるといえるのではないでしょうか。
日曜の朝、カリカリに焼いたトーストを片手にエスプレッソを飲みながら、ちょっとひねりの利いたアイデアを考えてみるのはどうでしょう。あるいは好きな雑誌をぱらぱらめくりながら、次に取りかかる作品についてあれこれ頭を悩ませてみる。もしかしたら朝の特別な時間の流れがおもしろい考えをひらめかせてくれるかもしれません。
さて今日は何を作りましょうか。

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