Encadreur N°8 – Avant // Après マウンテン・サイクリング

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そうだ。山に行こう。という考えが頭にふってわいてきたのはまだ寒さの残る2月のことだった。どうしてかはわからないけれど、自転車で山を登りたくなったのだ。その飢えはすさまじくて、飢餓といってもいいくらいで、その考えに取り憑かれた私はすぐさま近所の自転車専門のレンタルショップでフレームの軽いサイクリング用のマウンテン・バイクを借りると、カードで支払いを済ませ、店の人に近くで走れる山はないかと尋ねて、教えてもらった山を目指した。

私は別に登山家のラインホルト・メスナーみたいにそこに山があるから山を登りたいと思ったわけではない。子供の頃から山に登ったことなんて数えるほどしかないし、サイクリングで山を登るのだってはじめてのことだった。一言でいえば移り変わりやすい心の産物のようなもので、ふっとわきあがった衝動みたいなものだった。でも自転車のペダルを一歩漕ぎ出すと、全身の筋肉がぎゅっと引き締まる感じがして、子供の頃、自転車で自分のテリトリーを走り回っていたときのようななつかしい感覚が遠い記憶とともに蘇ってくるのを感じた。

あるいはそんな気持ちになったのは、もしかしたらこのポストカードを見つけたことが原因かもしれない。それはゆるいスラロームがつづく箱庭みたいなかわいらしい山を自転車に乗った人々がサイクリングしているイラストで、私は一月ほど前の休日にとある街の雑貨屋でそのカードを見つけたのだった。その箱庭みたいな山の感じがすっかり気に入った私は次の休みに時間をかけて額装した。箱庭みたいな山のブルーとグリーンのグラデーションの感じが印象的だったので、ガラスビーズを使って幻想的なイメージで額装していくことにした。必要な道具を用意して、バックグラウンド・ミュージックにCEROの「マウンテン・マウンテン」をかけて、淹れたてのホット・コーヒーを口にしてから、作業に取り掛かった。樹脂を乾かす必要があることをのぞいて、するべき作業はすべてその午後のうちに終えたのだった。

数日後いくつかの仕上げの作業を経て、それはシンプルで小ぶりな額装作品となって完成した。私はそれを学生時代に手に入れたトロフィーや記念メダルといった勲章のように玄関の壁に飾った。何かを成し遂げたあとの記念碑とでもいうみたいに。

借りた自転車が高性能だったからか、あるいはその山が初心者に優しい起伏のゆるやかなコースだったからか山頂まではあっというまに辿りついた。私は山の頂付近にあるちょっと開けた空き地に自転車をとめると、小さくその場で伸びをして、ふもとのコンビニエンス・ストアで買ったスポーツ・ドリンクを飲んだ。それから山の上の澄み切った空気を肺の中いっぱいに吸い込むと、久しく感じたことのなかった体の底から湧き上がってくる高揚感みたいなものにしばらくのあいだ身を預けてみたいと思った。

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オランダのHet Paradijsのポストカードとガラスビーズ、フレームを用意。山のイメージがあったので、ガラスビーズはかたちの不揃いなものを使用しました。

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カードの背景部分をハサミでカット。カットしたカードの裏側に厚紙を貼って補強しました。

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ガラスビーズを貼り付ける台紙部分にアクリル絵の具で着彩していきます。ポストカードのカラーを参考にしながら何度か重ね塗り。

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色を塗ったところ。サイクリング・ロード風に白いラインを入れています。さてここから本題のガラスビーズの出番です。

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ガラスビーズを敷き詰めたあと、リアリスティック・ウォーターを流し込んでいきます。あまりいっぱいにならないように注意しながらまんべんなく流し入れたら乾くまで(数日)放置。

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樹脂が完全に乾いたらパッスパルトゥを重ねてフレームに収めます。仕上げの作業をしたら完成!ガラスビーズのグラデーションが幻想的な雰囲気を醸し出す不思議な感じの作品になりました。

 


2016年04月01日 | Posted in Encadreur N°8 | | No Comments » 

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