Encadreur N°8 – Cycling, cycling, cycling… – サイクリング、サイクリング、サイクリング

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まだずっと子供だった頃、自転車は世界を広げてくれる唯一の乗り物だった。徒歩では到底辿りつくことができない場所まで運んでくれる魔法の絨毯みたいなものといってもいいかもしれない。自転車に乗ってサイクリングに出かければそれこそ世界の果てにだって行けるような気になったものだった。

でもそのような関係は10代の頃フランスに行ったときに一変した。簡単にいえば自転車との関係はずいぶんと疎遠なものになってしまった。というのは、自転車もクルマと同じように車道を走らなければならないパリの街でサイクリングすることは、とても勇気を必要とすることだったからだ。それにメトロ(地下鉄)やバスといった交通機関が便利なパリの街でわざわざ盗難の危険のある自転車に乗るのは意味のないことに思えたというのも大きかった。

数年後に帰国したときもう一度自転車のある生活に戻そうと思ったことがある。でも一度はなれた習慣を取り戻すのはなかなかに難しいことだった。なにしろはじめはどう乗りこなせばいいのかわからなかったし、再び乗り回せるようになってもどこかむず痒い居心地の悪さみたいなものを感じ続けることとなったから。そして、次第にきびしくなった路上駐車の不便さを感じて自転車に乗ること自体やめてしまった。

それでも心のどこかではまだ子供時代に感じたサイクリングの感触をしっかりと憶えているもので、このHet Paradijsの自転車のカード・シリーズを見たとき、どうしても揃えてみたい気持ちになった。自転車のイラストというと自転車それ自体が主役になっているものが多いけれど、この素朴なタッチのイラストのシリーズは自転車に関わる人たちが主題になっていてそのことにたいして好感を持てたからかもしれない。とくにバゲットを小脇に抱えて走る男の子の絵がお気に入りで、かつて自分がたのしんで自転車を乗り回していたころのことを思い出させてくれるような気がした。(もちろんバゲットを小脇に抱えるなんておしゃれなことはしていなかったわけだけれども)

そこで自転車との関係性みたいなもののささやかな修復の糸口として、このカードを額装して飾ってみることにした。テクニックはシンプルに45°のビゾー・クラシックという技法を使う。これは素材のカードが素朴でよけいなものを必要としない感じがしたからだ。完成した作品はキャビネットの上に飾ることにした。額装のなかでバゲットを抱えながら一生懸命ペダルをこぐ少年の姿を眺めて、大人になった私はかつて自転車とともに街を走った記憶を少しずつ思い出そうと思っている。

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オランダのHet Paradijsのバイシクルのカード・シリーズ。クラフト紙っぽい紙に印刷されているため、独特のざらっとした質感があります。大きさはポストカードよりひとまわりほど大きいサイズ。

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今回はこのバゲットを小脇に抱えて走る男の子のカードをチョイス。ちょっとドングリみたいにも見えるベレー帽と短パンの組み合わせがおしゃれ。

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コンパスを使ってパッスパルトゥの紙に線を入れていきます。

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クリーム色の色紙をパッスパルトゥの厚紙に貼ったら、裏側を処理します。これでパッスパルトゥの完成!

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45°カッターで厚紙を斜めにカットして、ビゾー部分を作ります。それができたらビゾー部分に黒い色紙でビゾーの紙を貼って色をつけていきます。

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裏板を作って、フレームに収めたらあとは仕上げの作業をして完成! シンプルな感じに仕上げたかったので、幅の細いナチュラルな感じの木製のフレームを使いました。


2016年03月11日 | Posted in Encadreur N°8 | | No Comments » 

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