Coffee Beans – バリのコーヒービーンズ – ストーリー編

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日曜の朝、ふと思い立って到来物のコーヒーを淹れてみることにした。最近の私は一端のコーヒー博士を名乗れるくらいコーヒーについていろいろ調べていて(エチオピアがその起源であること、いまではコーヒーベルトという一帯で多くのコーヒーが生産されていることなど)知識だけはなかなかのものだと自負していた。でも恥ずかしいことだけど南米産以外のコーヒーでブレンドされていないものを飲むのは、これが人生ではじめてのことだったのだ。私はさっそくとばかりに紙の袋をあけて中身の豆を取り出すと丁寧にミルで挽いた。するとおだやかなコーヒーの香りが朝のシャワーみたいな陽光を浴びてすっかり気分をよくしたリビングにふわっと広がった。ふうむ、これがうわさに聞くバリの香りだろうか。もちろん、私はこれまでバリに一度だって行ったことがない。頭のなかに浮かぶのはガムランやケチャといった民族音楽のイメージとか、マングローブに古びた寺院といった観光旅行的イメージだけ。でも、そのステレオタイプなイメージは間違っているのだろうと思った。なぜってこのコーヒーの甘い香りにはとても都会的に洗練された気配があったから。

私はコーヒー豆を挽き終えると、エアロプレスの器具に豆とお湯を入れて、いっきに抽出した。コーヒーにはいくとおりもの抽出方法があって、きっとこの豆にも適切な方法があるのだろうけれど、何が適しているのかわからないのでいつもの方法でやるしかなかった。抽出したコーヒーはひとことでは形容するのは難しく、とにかく複雑な味わいでとてもおいしいものだった。さっぱりとした味のなかに果実にも似た独特の甘さが残る。それは日曜の目覚めにとてもふさわしい味。

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コーヒーを飲み終えた私はあとに残されたパッケージをじっと見つめた。これをゴミ箱に捨ててしまうのは忍びない気がした。で額装することにした。元々コーヒー豆がたっぷり入っていたのだから、コーヒー豆で額装すればいいと思った。アントル・トロア・ヴェールのテクニックを使えばいい。3枚のガラス(実際にはアクリル板を使うけど)の隙間にパッケージと豆粒を挟むのだ。私は2杯目のコーヒーを今度はラテにして味わいながら、ゆっくりと額の選定に取りかかることにした。 選んだのはダーク・ブラウンの木製の額。あちこちに傷がある古びた額で、アンティークと呼べるほどいいものじゃないけれど、どこか愛着の感じられるフレーム。私は額とパッケージを並べておいてみて、雰囲気を確かめた。悪くないと思えたので、額のサイズでアクリル板を切り出していった。必要になるアクリル板は3枚で、1枚目と2枚目のあいだにドキュモンとなるコーヒーのパッケージを挟み、2枚目と3枚目のあいだにはヒノキの棒で高さを出して、コーヒー豆を入れていくことにする。アクリル板を切り終えるとつづいて高さを出すためのヒノキの角棒を4辺分切り出し、絵具で色をつけていった。

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パーツを作り終えれば、あとは組み立ての作業。だいたい中央の位置に合わせてコーヒーのパッケージを貼付けたら、ヒノキの角棒で高さを出したアクリル板の上にコーヒー豆を入れていった。もちろん、頂き物のコーヒーを使うわけにはいかないので、キッチンの戸棚の奥に眠っていたもうすっかり香りも飛んでしまった古びたコーヒー豆を代用していれた。袋にいっぱい詰まっているみたいに豆をいれて、アクリル板をパッケした。

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ここまでくればあとは裏板を残すだけ。ささっと作った裏板をボンドで貼付けた。完成した作品を手に持つと額のなかでコーヒー豆が気持ち良さそうな音を立てた。私はできた作品を本だなのお気に入りの場所に飾ってしばらく眺めた。そして一息つくと完成の余韻を味わいたくて、本日3杯目となるコーヒーを淹れにキッチンへ行こうと思った。

 


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