coffee and encadrement

coffee

今号はコーヒーと額装がテーマです。ジム・ジャームッシュのすてきな映画に「コーヒー・アンド・シガレッツ」という作品がありますが、コーヒーと額装だって似合いのカップルなんじゃないかとぼくは思ったりします。まあ、そりゃコーヒーの右腕みたいな煙草と比べたら切れない仲というほどではないですが、最近は愛煙家も隅においやられてしまったりしていますので、コーヒーの相方候補に額装が名乗りをあげてもいいんじゃないかなと思うのです。「コーヒー・アンド・アンカードルモン」みたいにね。

そこでこの号を作るにあたって、そもそもコーヒーについて自分が語ることができるほどの知識があるのかについて考えてみました。ぼくは根っからのコーヒー・マニアで、カフェインがないと生きていられないと思っていたりして、たぶん十代のころから毎日最低でも3杯はコーヒーを嗜んでいることを自負していますが、コーヒーそれ自体のことについてとなるとあんまり知らなかったりします。コーヒーの豆が実は果実の仲間だということさえ、今回調べてみてはじめて知ったくらい。そこでわからないことがあればといつものように街の本屋へと繰り出して、コーヒーやらカフェやらそういった本の書架をさらっと見てみました。たいていの場合、そこで何らかの答えなり道標なり神の啓示なりが見つかるものです。そのために本は書かれているのですから。でも、結果からいえば残念なことにあまりいい成果は得られませんでした。そこに並んでいたのは、素人がはじめるカフェ経営の仕方だとか、ラテアートのつくりかただとか、サード・ウェーブがなんたらかんたらといった実用向きの書籍ばかりだったからです。肝心のコーヒーと額装をつなげるための雑学本はまったくといっていいほど見当たらなかったのです。ぼくはそこでコーヒーの歴史を調べることをひとまず諦めることにしました。

家に帰ると今度はインターネットで検索して「コーヒーの真実」なるDVDが存在していることを知り、さっそくレンタルショップに行って借りてきて鑑賞しました。本は面倒くさいけれど映像なら頭にするする入ってくるし、これは我ながらいい作戦だと思ったのです。でも結論からいえばこれもまるで役に立ちませんでした。映画はとてもすばらしいドキュメンタリーでコーヒー豆業界のグローバル化における問題点をびしっとわかりやすく指摘していましたが、何か額装と関係しそうかと問われたらつながりになりそうなものは何もありませんでした。この映画を見てぼくが得た知識はイリー・コーヒーで有名なイリー博士のことばで「エスプレッソ1杯の質を決めるのは50粒ほどの豆です。約7グラムすべての豆が完璧でなくてはならない」というものです。このことばと出会って普段何気なく飲んでいたエスプレッソに対する考え方がほんの少しだけ変わりました。それから映画では主にコーヒー発祥の地であるエチオピアが抱える問題を扱っていたため、その日から毎日エアロプレスで飲むコーヒー豆をエチオピア産に変えてみました。

正直これ以上コーヒーについて調べていると小冊子を作るための情報を調べているはずなのに、いつのまにかコーヒー界の情報に洗脳されるというミイラ取りがミイラになるみたいな状況になっていく気がしたので、コーヒーについて調べるのをやめました。でぼくのコーヒーを巡るとても短い旅が終わりを迎えることになったのです。

何にせよ、コーヒーはぼくたちの生活とはある意味切ってもきれないものですし、額装の素材としても、こういっては何ですがとてもおもしろい可能性を秘めたものだと思います。というわけで今号ではコーヒーと額装の可能性について、いろいろなかたちで探ってみたいと思います。いつの日か額装がコーヒーの相方の座を射止めることができるように祈って。


2014年12月06日 | Posted in Encadreur N°3 | タグ: , , , , No Comments » 

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