Behind the scenes – Encadreur N°6 アンカードラー 6号で使われなかった本。

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額装の雑誌アンカードラーの6号を作るにあたっていろいろ過去に読んだ本を当たってみたわけですが、
使いたいけれど、ドキュモンがなかったり、むずかしかったりで登場できなかった本をいくつか紹介してみたいと思います。

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▲アーシェラ・ル=グィン『闇の左手』

ゲド戦記で有名なル=グィンのSF本。新装版の表紙が丹治陽子さんのイラストで、個人的にこの表紙の絵が好きで(作品のなかでもとてもうつくしいシーンなので)、額装したい、、、でもやっぱり本の表紙を使うのは気がひけるので、額装できませんでした。(本来、本の表紙カバーのジャケットみたいな部分は汚れないためのブックカバーのはずなので使ってもいいはずですが、なんかできません、、、それに本の場合タイトルとかが入ってくるので、どうしてもドキュモンとして使える部分が少なくなってしまう、という言い訳もあったりします)

内容もとてもいい小説です。トランス・ジェンダーの問題をハイ・ユニバースという世界で展開させているグィンの代表作。ジブリの宮崎駿さんが映画化したかったとどこかで書いていて、個人的にあまりジブリの映画が好きじゃないのですが、宮崎駿さん版の「闇の左手」は見たかったな(たぶん権利とかの問題で制作されることはないとおもうので)と思ってます。

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▲ガルシア=マルケス『雪の上に落ちたお前の血の跡(「十二の遍歴の物語」)』 

少し前に亡くなられたコロンビアの偉大なノーベル賞受賞作家。『百年の孤独』が有名でたしかに文句のつけようのないうつくしい作品ですが、個人的には短編集の『十二の遍歴の物語』のなかの最後を飾る「雪の上に落ちたお前の血の跡」というお話が好きです。というのは、この作品はパリの街を舞台に書かれているのですが、ガルシア=マルケス自身若いときにパリに滞在したことがあるので、異邦人の視点でパリの街を描きだす感じがとてもうつくしく、この短編を読むと、パリという街はむかしから本当に変わっていないんだな、というのがよくわかるからです。フランス人がパリの街を描く作品は多いですが、どちらかというと外国の人がパリの街を描く方が共感が持てたりします。たぶん街をみる視点が異邦人のものだから、というところにあるのだと思います。異邦人が感じるパリの気配みたいなものを額装のなかに封じ込めることができたら、、、とよく考えることがありますね。

この作品のイメージ白い雪の上に赤い血の点が道標のようにパリまで続いている、、、というようなイメージは強く頭に残っているので、そういうイメージから作品を作ってみたいなと思ったりします。

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▲ジョン・クロウリー『リトル・ビッグ』

この本のイメージもいつか額装してみたいなと思っています。とても好きな作品で、タイトルの通り大きいもの(都市、人間、社会)小さいもの(田舎、妖精、個人)といった対比によって作品が描かれています。エッジウッド。パラケルススの錬金術。四大元素。時の考え方。意匠。クロウリーは古代の図案、シンボルとかの研究、シェイクスピアの研究などから作品を描いているので、ファンタジーよりのお話なのですが、かなり異色な作品になっています。

この人の別の作品「エンジン・サマー」のイメージも額装の作品のイメージとしてはおもしろいかもしれないなと思っています。世界観みたいなものを額装のイメージのなかに落とし込むことでちょっと不思議な作品ができるかも。

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▲エイミー・ベンダー 『果物と単語(「わがままなやつら」)』

アメリカの作家エイミー・ベンダーの短編集『わがままなやつら』にでてくる一編です。エイミー・ベンダーの作品はどれもマジック・リアリズム的な感覚で書かれているのですが、より現代的な可視化しやすいものに置き換えられてでてくる。この短編では、単語の置物が登場するのだけれど、元素やら素材で作られている。たとえば血ならBlood、で、単語のアルファベットが実際の血で作られているといったように。そのようなものは現実には存在しないけれど、読むだけでそんなものが頭のなかだけでも存在するような気分になってしまう。そういった可視化可能なイメージを額装に転用できたらちょっとおもしろいな、と思いました。ただ、やっぱりそこはマジック・リアリズムなわけで、一筋縄ではいかないなという感じです。

この短編のイメージも額装したかったけれどいまだにできないなと思います。エイミー・ベンダーの作品はマジック・リアリズム的な感覚をより現代的な可視化しやすいものに置き換えて(日常のてきなもの、スーパーで置いてありそうな)表現しているので、額装で表現しやすい気がするのですが、やっぱりそこはマジック・リアリズムなので一筋縄ではいかないなという感じです。

ここに挙げた本以外でも、本の装丁というものは見ているだけでもうつくしいものが多くて、
紙や色選びの参考になることが多いです。新しい額装作品づくりの参考に街の本屋さんを覗いてみるのもいいかもしれません。


2015年09月08日 | Posted in Behind the Scenes, Book | | No Comments » 

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