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今月も終わりに近づいてきたので、読んだ本をいくつか紹介。

村上春樹「羊をめぐる冒険(上)(下)」

村上春樹さんの長編、短編はだいたい読んでいるのですが、いくつかだけリストから漏れているのがありました。「ダンス、ダンス、ダンス」「ノルウェイの森」、それから「羊をめぐる冒険」。けっして読み忘れというのではなくて、「ノルウェイの森」と「羊をめぐる冒険」に関しては上巻だけなら何度も読んだことがあって、たんに下巻の途中でとまってしまうという問題を抱えていたため読み終えることができなかっただけです。読み直すたびに買い直したりもしているので、これまでも読む気はあったんだけど、なぜか途中でなにかが起きて読み終えることができなかったのですね。例外的に「ダンス・ダンス・ダンス」だけは持っているけど、まだいちども本を開いたことがなかったりします。これには理由があって、僕は高校時代パリのインターナショナルスクールに通っていたのですが、そこの小さな図書室の一角に日本語の本のコーナーがあり、その書架にあった村上春樹さんの作品がたしか「ダンス・ダンス・ダンス」だったんです。佐々木マキさんの表紙のハードカバーで、なんだかよくわからないけれど当時の僕にはそれがなんだか読んではいけない本のような気がしました。いまはまだそのときじゃない、みたいな。数少ないほかの日本語の本はけっこう読んでいたんですが、この本だけはそういう理由もあって避けていて、それがいまでも続いているという感じです。「ダンス・ダンス・ダンス」のことを思い出すと、高校時代のことを思い出すし、それはその図書室の記憶につながっているからだと思います。それくらい佐々木マキさんの絵が印象的で記憶に焼きついているのでしょうね。近く読破しようと思っていますが。

で、「羊をめぐる冒険」。いまさらながらですが、読んでよかったという思いです。毎回読むたびに下巻のいるかホテルのところのくだりで読むのをやめてしまっていたのですが今回はなんとか先に進むことができました。というかそこからがおもしろいところだったと今回読んで気付きました。(出版されたのは「羊をめぐる冒険」よりあとですが)ポール・オースターの「鍵のかかった部屋」とか「リヴァイアサン」に雰囲気が似ているなと思いました。テンポよく読めるのでオススメです。

 

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「彼方なる歌に耳を澄ませよ」アリステア・マクラウド

アントレソルティの隣の本屋さんで購入。ぜんぜん知らない作家さんでした。短編小説専門の作家さんが書いた唯一の長編だそうです。まだ途中だけれど、いい感じです。ガルシア=マルケスの「百年の孤独」的な一族の物語がけっこう好きで(似たようなのにジョン・クロウリーの「リトル・ビッグ」という小説がありこれがいまのところ個人的ベスト)、これもそれに近いと聞いたのでたのしく読んでいるところです。ちょっと冷徹な感じの(俯瞰的な)視点の置き方なんですが、文章の力なのか読んでいて全体的に暖かさというか安心感みたいなものが感じられるのがすごいな、と思ったりしてます。

ただこれは個人的な印象なのですが、短編小説家が長編を書くと、けっこう読みにくくてしんどくなるところがあります。短編がうまければうまいほどその傾向がつよいんじゃないかと思います。ガルシア=マルケスやジョン・アーヴィングみたいに短編も長編も中編も何でもこなせる稀有な人もいることはありますが、短編ばかり書いている作家さんはどうしても長編が息苦しい感じがするように思えます。たとえば僕はエイミー・ベンダーというアメリカの作家さんが好きですが、この人も短編がすてきすぎるけれど、長編は無駄に長いところがあり(けっして長い作品ということではないです)読破するのがけっこうしんどかったりしました。たぶん共通するのは、短編的な文章の美しさとかディテールの緻密さだとか小さなエピソードに力をいれたがる節があったりするところが、長篇という構造のなかでうまく機能しないというか邪魔になるときがあるんじゃないかなということ。作品を構成するパーツひとつひとつはおもしろいんだけど、いまいちのめり込めず、ドライブする感覚が訪れないまま作品が終わってしまうんですね。長編はときとして物語の動きのためにディテールや文章の美しさを犠牲にしなくてはならないときがくるんだと思います。少々荒いくらいの方が読者としては物語に移入しやすいというか。クライマックスに向かうところがなくて、カタルシスを感じにくいからかもしれません。

作品がすばらしいことに変わりはないんですけどね。


2015年04月30日 | Posted in Book | タグ: , , No Comments » 

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