avant // apres – dogs(犬たち)

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dogs – 犬たち


小さい頃、家を引っ越してばかりだったからか、我が家ではペットを飼うという習慣がなかった。
それでなのかはわからないけれど、いまでも私は犬やネコがあまり好きじゃない。
このことを人に話すと不思議がられるけれど、別にアレルギーがあるとかいうわけじゃなくてたんに知らないから怖れているだけなのだと思う。だって心のどこかでは犬やネコと暮らしてみたいと思っていたりするから。

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そのことを強く感じたのは週末の朝、家からすこしはなれたパン屋に朝食のためのクロワッサンを買いに出かけたときのことだ。わざわざ散歩がてらパン屋に向かうのはできたてのパンに目がないからで、これもペットと同じように我が家の習慣からきているのだと思う。引っ越しばかりしていた私の家族が、いろいろな街に移り住んでまず手始めにしてきたことはその街にある信頼のおけそうなパン屋を探すことだった。それが課せられた唯一の使命だというみたいに私たちはいいパン屋を探しまわった。というのも表面はカリカリに焼けていて、なかはふんわりとしているできたてのパンと温かいコーヒーがあったら、それだけで不思議と見知らぬ街にいる不安な気持ちを吹き飛ばすことができたから。そういうこともあってか大人になったいまでも私は休日になるとできるかぎり朝からパン屋に足を伸ばすようにしている。

その日も私は朝早くから肌寒い街路を歩いた。
通りには実に多くの犬を連れた飼い主たちの姿があった。
彼らはダックスフントにトイプードル、ラブラドール・レトリーバーにテリア、小型のビーグルやチワワをつれていて、まるで動物園かなにかに迷いこんだようだった。彼らの愛犬たちはみなモコモコしたカラフルな犬用のセーターに身を包み、おそろいのニットの帽子をかぶっていた。それはちょっとしたファッションショーみたいな感じで、見ているこちらまで微笑ましくなるほどだった。そして、そんなかわいらしい犬たちとすれちがい続けていると、突然私も自分の飼い犬が欲しくてたまらなくなった。オレンジ色の服に身を包んだあのダックスフントが。

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といっても、そんなことは無理なことくらい私にもわかっていた。
これはぬいぐるみを買うのとはわけがちがうのだ。
でも、どこかで諦めきれない私は別の日の午後、小さなダックスフントの絵がかわいらしいカードをもっていたことを思い出し、それを額装してみることにした。犬を飼うことはできないかもしれないけれど、部屋に作品を飾れば犬と一緒に生活をしているような気分をほんのちょっぴりでも味わうことができるかもしれないと思って。ともかく早朝の散歩を額装のテーマに定めて、エスカルゴのテクニックを使ってぐるりと回る迷路のようなビゾーを作った。下地にはモノトーンのパリの地図を貼った。こうすればかわいいダックスフントをつれて優雅にパリの街を散歩している気分に少しくらい浸ることができるだろう。完成した作品は廊下にそっと飾った。以来、私は家を出るとき、決まって目を閉じて、背後から聞こえてくる犬の泣き声にじっと耳を傾けるようになったのでした。


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